環境省(かんきょうしょう、英: Ministry of the Environment、略称: MOE)は、日本の行政機関のひとつ。環境の保全・整備、公害の防止、原子力安全政策を所管する。

所掌事務

環境省設置法に定められた上記の任務を達成するため、同法第4条は環境省がつかさどる事務を計26号にわたって規定している。具体的には以下の事項に関する事務がある。

沿革

  • 1956年(昭和31年)5月1日 - 水俣病正式発見。
  • 1964年(昭和39年)3月27日 - 閣議決定により、公害対策推進連絡会議を設置。
  • 1967年(昭和42年)8月3日 - 公害対策基本法が公布・同日施行。
  • 1970年(昭和45年)7月31日 - 内閣に公害対策本部を設置。
    • 11月24日 - 召集の第64回国会において公害対策関連14法案が成立。この国会は公害国会の異名をとった。
    • 12月28日 - 佐藤栄作首相が環境保護庁(仮称)の新設を裁定。
  • 1971年(昭和46年)1月8日 - 環境庁の新設を閣議了解。
    • 7月1日 - 総理府の外局として環境庁が発足。内閣公害対策本部(総理府公害対策室を含む)、厚生省(大臣官房国立公園部、環境衛生局公害部)、通商産業省(公害保安局公害部)、経済企画庁(国民生活局の一部)、林野庁(指導部造林保護課の一部)などの環境関係部署が統合した。
  • 2001年(平成13年)1月6日 - 中央省庁再編により環境庁を改組し、環境省設置。厚生省より、廃棄物処理行政を移管した。
  • 2005年(平成17年)10月1日 - 内部部局として「水・大気環境局」(環境管理局を改組)を、地方支分部局として「地方環境事務所」を設置。
  • 2012年(平成24年)9月19日 - 原子力規制委員会設置法が施行され、任務に「原子力の研究、開発及び利用における安全の確保」が加わる。対応する組織として、外局の原子力規制委員会を設置。同委員会には事務局として原子力規制庁が置かれた。
  • 2013年(平成25年)7月 - 情報漏洩事件発生。
  • 2017年(平成29年)7月14日 - 総合環境政策局の廃止及び環境保健部の大臣官房への移管、大臣官房廃棄物・リサイクル対策部の廃止、環境再生・資源循環局の新設などを柱とした組織改編を行う。

組織

環境省の内部組織は一般的に、法律の環境省設置法、政令の環境省組織令及び省令の環境省組織規則が階層的に規定している。 本省内部部局は、中央合同庁舎第5号館3階及び22階から26階に所在している。

幹部

  • 環境大臣(法律第5条)
  • 環境副大臣(国家行政組織法第16条)(2人)
  • 環境大臣政務官(国家行政組織法第17条)(2人)
  • 環境大臣補佐官(国家行政組織法第17条の2)(1人以内、必置ではない)
  • 環境事務次官(国家行政組織法第18条)
  • 地球環境審議官(法律第6条)
  • 環境大臣秘書官

内部部局

審議会等

  • 中央環境審議会(地球環境法、法律第7条)
  • 公害健康被害補償不服審査会(公害健康被害の補償等に関する法律)
  • 臨時水俣病認定審査会(政令第41条)
  • 有明海・八代海等総合調査評価委員会(有明海及び八代海等を再生するための特別措置に関する法律)
  • 環境省国立研究開発法人審議会

施設等機関

  • 環境調査研修所(政令第42条)
    • 国立水俣病総合研究センター

特別の機関

  • 公害対策会議(環境基本法、法律第11条)

地方支分部局

地方支分部局として地方環境事務所をおく(法律第12条)。

  • 北海道地方環境事務所(政令第43条)
  • 東北地方環境事務所
  • 福島地方環境事務所
  • 関東地方環境事務所
  • 中部地方環境事務所
  • 近畿地方環境事務所
  • 中国四国地方環境事務所
  • 九州地方環境事務所

外局

  • 原子力規制委員会(国家行政組織法、原子力規制委員会設置法)
    • 原子炉安全専門審査会(第13条第1項)
    • 核燃料安全専門審査会
    • 放射線審議会(放射線障害防止の技術的基準に関する法律、同条第2項)
    • 国立研究開発法人審議会
    • 原子力規制庁(第27条第1項)(原子力規制委員会の事務局)
    • 原子力安全人材育成センター(原子力規制委員会の施設等機関)

所管法人

環境省が主管する独立行政法人は2024年4月1日現在、国立環境研究所、環境再生保全機構の2法人である。

環境省が主管する特殊法人は2024年4月1日現在、中間貯蔵・環境安全事業株式会社のみである。これは、株式会社の形態で設立された特殊会社である。

環境省が主管する特別の法律により設立される民間法人(特別民間法人)、認可法人、地方共同法人及び特別の法律により設立される法人は存在しない。

財政

2023年度(令和5年度)一般会計当初予算における環境省所管の歳出予算は3207億1241万9千円である。組織別の内訳は本省が2669億8372万8千円、地方環境事務所が77億5589万1千円、原子力規制委員会が459億7280万円となっている。共通費を除く主な科目は「石油石炭税財源エネルギー需給構造高度化対策費エネルギー対策特別会計へ繰入」(本省)が1267億8700万円、「廃棄物処理施設整備費」(本省)が376億0437万5千円、「電源開発促進税財源原子力安全規制対策費エネルギー対策特別会計へ繰入」(原子力規制委員会)が336億1800万円などとなっている。

歳入予算は138億1366万9千円で、全額が雑収入である。

環境省は、内閣府、文部科学省及び経済産業省とエネルギー対策特別会計を共管している。また、国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、デジタル庁、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省所管の東日本大震災復興特別会計を共管する。

職員

一般職の在職者数は2023年7月1日現在、環境省全体で2,994人(男性2,343人、女性651人)である。うち、本省(地方環境事務所を含む)が2,023人(男性1,536人、女性487人)、原子力規制委員会(原子力規制庁及び施設等機関を含む。)が971人(男性807人、女性164人)となっている。

行政機関職員定員令に定められた環境省の定員は特別職1人を含めて3,385人である。本省および各外局別の定員は省令の環境省定員規則が、本省2,252人、原子力規制委員会(事務局(原子力規制庁)及び施設等機関の職員の定員)1,133人、合計3,385人と規定する。

2024年度一般会計予算における予算定員は特別職17人、一般職2,119人の計2,136人である。一般会計の予算定員の機関別内訳は環境省本省が1,107人、地方環境事務所635人 原子力規制委員会(原子力規制庁及び施設等機関を含む)394人である。特別会計の予算定員は、エネルギー対策特別会計(環境省所管分)が7521531人(すべて地方環境事務所)である。

環境省職員は一般職の国家公務員なので、労働基本権のうち争議権と団体協約締結権は国家公務員法により認められていない。団結権は保障されており、職員は労働組合として国公法の規定する「職員団体」を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる(国公法第108条の2第3項)。

2022年3月31日現在、人事院に登録された職員団体の数は単一体1となっている。組合員数は8人、組織率は0.3%となっている。組織率は13府省2院の平均である38.3%を38ポイント下回っている。2000年代は2009年度末まで職員団体の組織率が2割程度で推移していたが、2010年度、一挙に0%になっている。過去にあった労組は全環境省労働組合(略称:全環境)で、連合・全労連いずれにも属さない中立系組合であった。その後再度組織されたが極めて弱小である。

広報

環境省の編集する白書には「環境白書」、「循環型社会白書」、「生物多様性白書」の3つがあり、それぞれ、環境基本法、循環型社会形成推進基本法および生物多様性基本法の規定により、毎年、政府が国会に提出することが定められた報告書と今後の施策文書を収録している。その内「環境白書」には環境基本法第12条に定められた「環境の状況及び政府が環境の保全に関して講じた施策に関する報告」と「環境の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書」が収録される。循環型社会白書と生物多様性白書も同様の形式である。以前はそれぞれ市販本が発行されていたが、2009年(平成21年)版から3白書の市販版は合冊となっている。

ウェブサイトのURLのドメイン名は「www.env.go.jp」である。定期刊行の広報誌としては、隔月刊の「エコジン」がある。2007年6月以前はぎょうせい発行の『かんきょう』が刊行されていたが、2007年7月から社団法人時事画報社発行で、隔月刊の「エコジン」に更新され、現在は環境省が発行し、株式会社文化工房が編集となっている。

歴代事務次官

環境事務次官

幹部

一般職の幹部は以下のとおりである。

  • 事務次官:鑓水洋
  • 地球環境審議官:松澤裕
  • 大臣官房長:上田康治
  • 大臣官房政策立案総括審議官:中尾豊
  • 大臣官房環境保健部長:前田光哉
  • 大臣官房地域脱炭素推進審議官:大森恵子
  • 総合環境政策統括官:秦康之
  • 地球環境局長:土居健太郎
  • 水・大気環境局長:松本啓朗
  • 自然環境局長:植田明浩
  • 環境再生・資源循環局長:白石隆夫

不祥事

除染事業を巡る汚職事件

2017年3月2日、福島第一原子力発電所事故を巡る除染事業に参入させる見返りに業者から飲食接待を受けたとして、福島環境再生事務所の除染推進市街地担当専門官が収賄容疑で逮捕された。

障害者雇用水増し

2018年8月28日、菅義偉内閣官房長官は、中央省庁の障害者雇用の水増し数を発表、全省庁水増し3,460人中、環境省は48人不足していた。

懇親会でクラスター発生

2022年4月5日、当省は「リバウンド警戒期間中」だった3月28日に環境経済課の職員12人が東京都内の飲食店で開催した懇親会で、うち20~30代の9人が新型コロナウイルス感染症に感染し、クラスターが発生したと発表した。

水俣病被害者懇談会、マイク打ち切り

2024年5月1日に熊本県水俣市で開催された水俣病犠牲者追悼慰霊式後の伊藤信太郎大臣と患者団体との懇談の席で、2団体の会員それぞれの発言の途中に、司会を担当した本省の特殊疾病対策室・木内哲平室長が大臣の帰りの新幹線に間に合わせるためを名目として、3分間の時間制限を超えたことを理由に、マイクの音を一方的に打ち切り、大臣一行が退席した事案が発生。団体からの猛烈な抗議や世論を受けた岸田政権は「不適切な対応だった 政府としておわび」(林官房長官)としてこれを謝罪したとしている。しかし、地元には現在もなお根強い不信感が続いている。さらに、伊藤信太郎大臣はこのマイク打ち切りがあった後も、6日後にあたる2024年5月7日までマイクを切ったことを知らなかったとしていた。

脚注

注釈

出典

関連項目

外部リンク

  • 環境省
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  • 環境省 (KankyoJpn.gov) - Facebook
  • 環境省 - YouTubeチャンネル

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